■労務を提供し収入得ている 使用されていることを要件としていない
電気メーターの取付工事を請負う個人作業者が契約解除の撤回、罰則規定の見直し等で団体交渉を申入れたところ会社が拒否。不当労働行為救済命令の対象になり、会社が訴訟を提起しました。先行裁判例の考慮要素から精査し、労働組合法の労働者性を肯定。組合の法適合性、請負契約終了後の団交応諾命令等で特徴のある判決です。
■事件の概要
原告は、電気メーターの取付工事をする会社です。取付工事をする個人作業者と請負契約を直接締結していましたが、個人作業者らは合同労組に加盟するとともに分会を結成。平成30年12月7日に、作業量と単価の保障や罰則の見直し、反則点が50点を超えて契約解除になった作業者の解除撤回を求めて団体交渉を申入れましたが会社は、個人作業者は労働契約を締結している従業員ではないとして、応じませんでした。
同月17日に、組合が不当労働行為救済申立てを行い、会社は個人作業者に対し請負契約終了を通知。同月26日、合同労組が契約更新手続期限の延期等で団体交渉を申入れましたが、会社はこれも拒否しました。
令和2年2月、東京都労働委員会が労組法7条2号3号の不当労働行為に該当するとして救済命令。中央労働委員会も再審査申立てを棄却したため、会社は取消しを求めて訴訟を提起しました。

■判決の要旨
一審は、組合が会計報告を行っていないので法適合組合ではないとの会社の主張に対して、「規約どおりの運営がされていることまで必要ない」と主張を斥けました。
労組法上の労働者該当性については、「労組法3条は『職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者』と定義しており、使用者に使用されることを要件としていない」ことから、「労働契約に類する契約によって労務を提供して収入を得る者」等も労組法上の労働者に含むとして、①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的、定型的決定、③報酬の労務対価性、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束といった補充的要素のほか、⑥顕著な事業者性などの諸要素を総合的に考慮して判断すべきとし、実態を精査しました。
①については、会社の年間工事数などが個人作業者が達成すべき工事件数となっていたことから、労働力として把握管理していたことを指摘。事業組織への組入れを肯定しました。②についても契約書や工事単価、計器工事の手順の遵守などから契約内容は一方的、定型的に決定していたとしました。③についても、比較的定型的な作業は作業時間に応じた報酬という見方もでき、労務対価性があると評価。④は、多くの個人作業者が原告からの報酬を主たる収入としていた等と指摘。⑤については、個人作業者の作業状況を常に確認できる態勢を確立していること、研修の義務付け等から会社の指揮監督下にあったと評価しました。⑥については、会社から必要な資材を提供され自らの労働力を工事に投入している実態を重視しました。
結論として、個人作業者は会社との関係で労組法上の労働者として認められるとしました。
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