評価者ではない第三者だから話せることがある――。若手社員の定着の難しさに頭を悩ます企業が多いなか、営業・販売支援のセレブリックス(東京都江東区、従業員数1126人)のセールスカンパニーでは2020年、社員の悩み相談に特化した「キャリア保健室」を設置した。定着支援の専任部署が中心となり、上司とは少し違う角度から社員のモヤモヤに向き合うことで、メンタルヘルスの改善や長期的キャリアの相談など、マネジメントの支援にも結び付けているという。詳しく話を聞いた。
■成長を助けてこそ 気づき生む面談支援
「キャリア保健室」を始めた背景について、北川和毅社長はこう話す。
「2018年以降、事業の急拡大で採用が100人を超える年が続くなか、組織に縦の階層が生まれ、リーダーやマネージャーのポジションが増えてきました。加えて、営業代行事業では約4割の社員が客先常駐です。『セレブリックスとは何か』という一体感をどう醸成するか。社員のエンゲージメント向上やサーベイ(調査)に取り組み始めたのもこの時期です」
求める人材ポリシーとして、8つの行動指針を端的なワードでまとめた「セレブリックスプライド」を策定。20年に人事部門のなかで人材教育や定着支援の専任部署をつくり、立ち上げたのがキャリア保健室だ。
「大事なことは、メンバー一人ひとりの成長を促す『ピープルマネジメント』の視点からのキャリア形成です。そのためには、リーダーやマネージャーを組織として支援する仕組みが必要。『人は勝手に成長する』とも言われますが、人の力を借りて、信頼や機会を与えられてこそ行動できる面もある。勝手に成長するタイプ以外の人を育ててこその育成です。働くことや仕事に、その人自身が意味を見出すための気づきとなる仕組みが重要です」
キャリア保健室を進める部署は、「バリュークリエイト部人材開発Div. エンプロイーエンパワーメントGr.」で、メンバーは現在育休者1人を含めて5人。セールスカンパニーの全社員約500人を対象としており、図1の通り、社員自身が悩みに応じて対応者を選べる仕組みが特徴の一つだ。
「例えば上司のスケジュールがパンパンだったり、話しづらいような内容でも、いつでもオンラインで30分から1時間程度、気軽に相談できる場」と説明するのは同部署の古城愛さん。自身のキャリアコンサルタントとしての資格も活かした相談対応について、こう話す。
「評価者ではない第三者だからこそ話せることもある。名前や所属、内容は全て開示不可で、上司をはじめ他者に知られることはありません。ただ本人の許可を前提に、課題解決のために必要だと感じた際には、現場へ共有・連携するための開示可否を確認しています」
定期的に配信する社内SNSの分かりやすい個所にキャリア保健室へのリンクを張り、社員の目に触れる仕組みにしている(図2)。年間の相談数は、22年度160件、23年度157件、24年度(11月まで)101件となっている。
同部署では新入社員の教育研修プログラムも行っており、研修を担当した講師が3カ月間、1on1の伴走面談も担当するなど、定着に向けた継続的な支援に力を入れている。また、全社員向けに毎月パルスサーベイ(意識調査)を実施し、健康や働きがいなど定期的に社員の声を聞き、変化をキャッチできる仕組みを取り入れている点も注目される。
■毎月10の問いで声を聞く 「本人の意思ありき」
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