■給与規程の変更認めず 69%から81%で同意は認めがたい
給与体系の変更にトラック運転手らが同意したのは、不利益変更が生じることを正確に理解することができなかったからであり、給与改定は認められないと未払い賃金を求めました。判決は時間単価が69%から81%の幅で減ることになるのに自由な意思で同意したとは認められない、説明会の資料では理解できないと請求を認めました。
■判決のポイント
被告との間で雇用契約を締結したトラック運転手が原告となり、残業代を請求しました。争点は、労働条件変更に同意があったかどうかです。
被告会社は、平成29年に説明会を実施した上で同意を取得し、給与体系を変更。旧給与体系の固定残業代(時間外職能給、夜勤・長距離手当、特別手当、特務手当)等を整理しようとしたものでした。
判決では、旧給与体系の各種手当を精査。手当は多岐にわたりますが、例えば時間外職能給の支給要件に、「個人の能力を考慮し加算される」といった時間外労働以外の要件があることを指摘。旧給与体系の固定残業代も無効としました。
また、給与体系の変更についての同意は、「当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否か」から判断されるべきとの最高裁判決(平成28・2・19判決)を引用して精査しました。
旧給与体系の各種手当が基礎賃金に含まれることを前提に計算した基礎賃金と、新給与体系の賃金をベースに定額残業代を除いて基礎賃金を算定し、旧給与体系と新給与体系を比較すると、時間単価については後者が前者の約69%から約81%の幅で減縮されることを重視。原告が不利益が発生する可能性があることを到底、認識していたとはいえず、自由な意思に基づいて同意されたものとは認められないとしました。不利益を認識する上での資料が不備が指摘される結果となっています。
■判決の要旨 「不利益が発生すると認識し得たとは認められない」
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