ひとりあたり人件費アップ可能率の計算【働き方改革キーワード】(赤津雅彦)

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人件費とは、毎月の賃金や賞与・退職金、それに企業が負担する法定福利費、募集費、教育訓練費等、ひとを雇うのにかかる総費用のことです。ひとりあたりの金額は、通常、会計年度中に発生する費用を社員数、例えば年度末の従業員数で割って、計算します。つまり働く人ひとりが働いた見返りとして会社が負担するお金です。これができていない場合、働き方改革は失敗に終わります。

ひとりあたり人件費のアップ率とは、翌年度にどの程度の人件費が発生するかという予則から費用を計算し、それを比べて計算します。たとえば、2022年度にひとりあたり50万円かかり、翌2023年度に発生するであろう費用を51万円としますと、ひとりあたりの人件費アップ可能率は、(51-50)÷50=0.02=2%となります。そして、この人件費のアップ率は、一般的には「ベースアップ」に相当する率となります。

ここで大事なのは、次年度の総人件費枠を経営計画から算定することです。また計算に入れるべき社員を正しく見極めなければなりません。年度末には在籍していても、年度初めに退職している場合は、翌年度の人件費枠には入れませんし、翌年度に入社する社員は、入れなければなりません。そして、この経営計画で威力を発揮するのが、付加価値をもとにした予測です。なぜなら人件費の源は付加価値額だからです。

国全体でも似た手法が使えます。例えば、2022年度の国の付加価値(名目国内総生産)が560.2兆円で、2023年度の見込み(政府発表分)が571.9兆円、それに働く人の数の変化から、ひとりあたりの人件費(雇用者所得)は、付加価値分析を通して計算します。詳細は省略しますが、ひとりあたり人件費アップ可能率は、1.3%(資料出所:第189回賃金システム研究会®)と計算されます。

昇給を行う企業では、 これに、昇給分の1.5%~1.9%を足して、ひとりあたりの「賃上げ率」を計算します。つまり、賃上げは、ベアと昇給分を足して、1.5+1.3=2.8%~1.5+1.9=3.4%と予測できるのです。


赤津雅彦(あかつ まさひこ)
賃金システム研究所🄬所長 賃金改革のプロ・プラチナ企業育成のマイスター🄬

主な著書:「新訂2版 賃金システム再構築マニュアル」、
「赤津雅彦の賃金改革キーワード」、
「伸びる組織のための人事・賃金基礎講座」等

(注)「プラチナ企業育成マイスター」は登録商標です。