欧州議会は3月30日、賃金の透明性に関する指令案を可決した。雇用主に男女間賃金格差の公開や採用時の賃金情報提供を義務付けるほか、労働者が同等の仕事をしている他の労働者の平均賃金レベルの情報を得る権利、賃金格差の分析と是正を進める「共同賃金評価」規定、賃金差別被害者の司法アクセスなどを定めた内容。EU加盟国は3年以内に国内法を整備する見込みだ。
男女間賃金格差の開示をめぐっては、EUを中心に2000年前後から賃金透明化に向けた議論や立法の動きがあり、2014年3月には「透明性を通じて男女同一賃金原則を強化する欧州委員会勧告」が出されている。日本で22年7月に300人超企業に義務化された、男女間賃金格差開示の動きの背景になったとの指摘もある。
可決されたEU賃金透明性指令では、250人以上雇用する企業は毎年、100~249人雇用する企業は3年に一度、基本給と変動的部分ごとの男女間賃金格差を公開する義務を負い、労働者は、自身と同一労働又は同一価値労働に従事する労働者範疇について、男女別の平均賃金水準に関する情報の提供を求め入手する情報入手権を持つ。
いずれかの労働者範疇で男女間に5%以上の平均賃金の差異があり、客観的で性中立的な要素で正当化する理由がない場合は、格差是正に向けた労使による「共同賃金評価」を行うことを定める。
そのほか、雇用主の立証責任や労使対話の促進、司法へのアクセス保障などを規定している。