不合理待遇36%が見直さず 正社員待遇下げの同一賃金も

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2020年4月の大企業を皮切りに、21年4月には中小企業も含めて全面施行されたパートタイム・有期雇用労働法。厚生労働省が施行半年後の10月1日時点の状況を調査したところ、正社員との間の不合理な待遇差について28.5%が「見直した」一方で、「見直しは特にしていない」が36.0%で上回った。

正社員とパート・有期労働者の両方を雇用する企業のうち、3社に1社は不合理な待遇差の見直しを行っていないことが判明。規模別では「1千人以上」が16.3%、「5~29人」が37.4%と規模が小さいほど高くなっており、中小企業を中心に同一労働同一賃金の対応が遅れていることを鮮明にした。

「パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」から。黄色マーカーの強調は編集部

他方で、28.2%が「待遇差はない」と回答していることから、「見直した」と合わせた56.7%が同一労働同一賃金に対応しているとの前向きな解釈も成り立つ。見直したと回答した企業に実施内容を複数回答で問うと、「パート・有期の待遇の見直し」が19.4%で突出して多く、その内容は「基本給」が45.1%、「有給の休暇制度」が35.3%、「賞与」が26.0%、「通勤手当」が20.4%の順で多くなった。

気になるのは、見直しの実施内容として「正社員の待遇の見直し」が6.2%、「正社員の職務内容等の見直し」が4.2%と、合計が10.4%に達した点だ。同一労働同一賃金ガイドラインでは、不合理な待遇差解消の手段として労使合意のない正社員の待遇引下げを「望ましくない」と明示。1割強全てが正社員の待遇を引き下げたとまでは言えないが、パート・有期の待遇を引き上げた企業の半数程度の企業には法の趣旨を逸脱していないかが問われる。

20年秋と中小企業の施行に至らない時点に労働政策研究・研修機構が実施した調査によると、同一労働同一賃金の対応として検討中も含めて待遇を見直すと回答した企業の12.6%が「正社員の減額や縮小」、10.5%が制度自体の「廃止」を示唆。対応の課題は「人件費負担の増加、原資の不足・捻出」が最多となっており、一部の企業がコストをカットする狙いで実際に正社員の待遇を切り下げている可能性が読みとれる。

労働政策研究・研修機構「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」から