政策を総動員して実現を目指す「賃金の引上げ」については、今年度2次補正予算と来年度予算で支援を大幅に強化。支援メニューとしては助成金に目がいきがちだが、賃上げを履行確保する行政の取組も不可欠となる。
厚生労働省は2次補正予算で、「同一労働同一賃金の徹底」として、労働基準監督官の52人の増員を要求した。現行では、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)がパートタイム・有期雇用労働法に基づく報告徴収を行い、法違反がある場合は助言・指導、違反がない場合でも雇用管理改善の必要性に応じて、働き方改革推進支援センターでの相談やコンサルティングなどの支援に繋げるなどして、パート・有期法の履行確保を図っている。
補正予算成立後は新たに、監督署が非正規雇用労働者の待遇改善に関与する。具体的には、監督官が不合理な待遇格差がないかどうか事実関係を確認。労働局の雇均部(室)は監督官が把握した情報に基づいて、報告徴収を実施する対象企業を選定し、パート・有期法に基づく是正指導の実効性を高めていく考えだ。
監督署としては別途、個別企業に賃上げの働きかけも行う。賃上げを検討する際の参考となる地域の賃金や企業の好取組事例を提供するほか、賃上げ支援策も含めてWEBサイトやインターネット広告での周知広報も強化する。
補正予算では経済産業省がこのほか、「価格転嫁対策のさらなる強化」として4.8億円を計上。買いたたきなど理不尽な取引が行われていないかを調査する「下請けGメン」について、300人体制へと拡充。原材料費やエネルギーコストの上昇分の適切な価格転嫁を進めて、中小企業が賃上げの原資を確保できるよう支援する。
また成長分野への労働移動を通じた賃上げを実現するため、個人によるキャリア相談から、リスキリング、転職までを一気通貫で支援する仕組みを整備する「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に753億円を要求。国が基金を創設した上で、民間の団体を通じて民間の専門家らに対し、事業にかかった経費の2分の1を補助する枠組みを想定している。