従業員の「健康」確保の取組が、生産性やブランドイメージを向上させるとして注目を集めている。なかでも40歳未満の従業員の生活習慣病などを予防することは、将来の医療費の削減効果が期待できるため、今後は企業と健康保険組合が協働して健診情報を活用する取組が増えそうだ。
先進的な事例をみると、まず三菱電機(東京都千代田区)は2015年度から、三菱電機健康保険組合とともに特定保健指導の階層化基準と同様の抽出条件を用い、該当する40歳未満に対して「若年層保健指導」を開始。単一健保と各事業所間で「個人情報の授受に関する確認書」を取り交わした上で、1回20分以上の個別面談で動機づけ支援を行い、手紙やメールでの中間フォローを経て、6カ月後の最終評価に至る。BMIや腹囲が基準値を上回る者の割合が低下するなど、支援の効果が得られたとしている。
同じく、「若年層のメタボ対策」に注力するのは、ブラザー(愛知県名古屋市)だ。ブラザー健康保険組合が組合員全員の健診データを経年分析した結果、特に男性について加齢とともに肥満率が高まる傾向が確認できたとして、40歳未満の男性をターゲットに選定。保健師面談やヘルシーランチ、プライベートジムによる運動指導などの実施により、体重の減少や意識の変化、医療費の微減といった効果が表れ始めているようだ。
一方、7千社超が加入する総合健保の関東ITソフトウエア健康保険組合は、40歳未満の生活習慣病予備群に「生活習慣病予防プログラム」を展開している。血圧などの数値が基準以上の対象者の運動施設の利用料を健保が全額負担し、インストラクターと作成した全12回の運動メニューを3カ月かけて消化。プログラム終了後に、簡易検査で数値が改善した者や、運動が習慣化した者が確認されるなどの効果が確認できた。
メタボ対策など40歳未満を対象とする保健事業は義務でないため、どうしても参加者の確保が課題となる。健康意識の低い若年層をどうコミットメントさせるかの工夫はもちろんだが、保健師との面談を就業時間内に行うことを認めるなど、企業側の協力が不可欠なのは言うまでもない。