シンギュラリティ(Singularity)とは英語で「特異点」を意味します。人類の知能を人工知能(AI)が超える転換点(技術的特異点)と解されます。労務管理問題をテーマにした賃金システム研究会?でも、今後の職務に関した具体的な環境変化について、機会あるごとに述べて参りました。シンギュラリティは、何もコンピュータの世界だけのことでなく、近い将来、働き方にも大きな変化が起こりますので、目を離せない重要な概念です。
例えば改札の業務が自動化され、かつての改札業務の仕事が無くなるだけでなく、新幹線の運転等はAIで予測することで、かなりのレベルで業務が自動化されました。これまで人間がプログラムした通りに行っていたことが、今後はコンピュータ技術のさらに進展し、AIが自分で予測して迅速に最適解を出すようになるのです。
自動車も自動運転が日常になるでしょう。そうなれば、運転といった従来の職務は淘汰され、人間が行うべき仕事としては、必要がなくなるのも時間の問題とされています。つまり、「職務のシンギュラリティ」が、ある日突然訪れる日も近いといえるのです。
すでに士業(弁護士、税理士、行政書士、司法書司、社会保険労務士)が行った古典的な職務は、電子申告に替えられつつあります。契約書等の作成も、かなりの部分をAIが行う時代になりました。その結果、これまで時間ばかりかかって、効率が悪かった役所への申請業務も、自動化されます。つまり、かつての士業の仕事は、必ずしも必要としなくなるのです。来るべき事態への準備は、すぐにでもはじめなくてはなりません。
今後は、AIの暴走をくいとめることや、情報漏洩に関するセキュリティの職務の価値が高くなると同時に、コンピュータではカバーできない、つまり人間にしかできない分野の職務の重要性が増すでしょう。そのひとつの例が、顧客の心情等に寄り添って行う、カウンセリングの職務です。経営コンサルタント(中小企業診断士)や医療従事者(医師、看護師、介護士)、そして教師や対面販売員のような、対人の仕事でのカウンセリング能力は、ますます必要で、価値の高い職能となるでしょう。