ウクライナ国外避難民386万人、各国で就労許可簡素化へ

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2月24日のロシアによるウクライナ侵攻から1カ月以上が経過し、国外に逃れるウクライナ避難民は386万人に達した(3月27日現在)。隣国ポーランドをはじめ周辺国では、欧州理事会が3月4日に採択した避難民の一時的保護の決定を背景に、居住や労働、医療などへのアクセスを保障する動きが広がる。日本でも3月15日、古川禎久法相が避難民への就労を認める方針を発表した。労働許可手続きの簡素化に関する各国の動きをみる。

ポーランドでは企業向けホットラインも

3月10日、ウクライナ西部のリヴィウ発ポーランド行きの電車を家族と一緒に待つ母親。電気と水が遮断され、2日前にハリコフの家を出た(©UNHCR/Valerio Muscella)

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、2月24日以降ウクライナから他国への避難民は3月27日現在で386万人。その6割を占める229万人が隣国ポーランドへ逃れている。以下ルーマニアに59万人、モルドバ共和国に38万人、ハンガリーに35万人、スロバキアに27万人、と続く。

欧州理事会は3月4日、ウクライナからの避難民に対する即時かつ集団的な一時的保護の実施を決定。避難先の国において、居住、労働市場、医療、教育へのアクセスを含む権利を受けられるようにする内容だ。

ポーランドのアンジェイ・デュダ大統領は3月12日、ウクライナ市民への支援に関する法律に署名。法の規定によれば、ウクライナ避難民は本人の意志に基づき18カ月間(延長可)ポーランドに合法的にとどまり、医療や育児、教育などの公共サービスを受けることかできる。

労働手続きについては、労働局へのインターネット通知義務のみと簡素化され、求職者登録など労働市場サービスへのアクセスが可能となるほか、1人当たり300ズロチ(約8400円)の給付が支給される。避難民の雇用に関する、企業向けホットラインも開設している。

ルーマニア政府は3月8日、欧州理事会の決定を受けて、労働や教育などへのアクセスを定めた緊急政令を発表。労働許可手続きについては、雇用契約において労働許可証を不要とした。

また就業の際に、特定の資格や経験を証明する同国の文書がない場合でも、その職業に従事するための資格や経験があることと犯罪歴がないことを記載した書類を提出することで、就業可能とした。その他、失業保険制度や失業防止施策へのアクセスについても定めている。

ハンガリー政府は3月10日、ウクライナ避難民を雇用した企業に対する補助金制度を発表した。ハンガリーに本社や事業所があり、ウクライナ避難民を週20時間以上就労させるといった条件を満たした法人に対し、最長12カ月(1回のみ延長可)、月6万フォリント(約2万円)を上限に住居手当と通勤手当の経費の半額を助成する。行政機関のウェブサイトにある専用フォームを通じて電子申請する仕組みだ。

■日本への避難民188人、就労許可へ

日本でも、避難民が就労できる体制整備が進む。法務省によれば、3月2日から23日までにウクライナから日本に入国した避難民は188人。古川法相は15日、避難民の長期滞在に向けて希望者には就労を認める方針を発表した。

これまで難民認定申請中の就労については、最初の8カ月間は就労できず、その期間が経過して審査結果が出ていない場合、結果が出るまで「特定活動(難民申請中)」として基本的に就労が認められていた。

しかし2018年1月に法務省入国管理局は方針を変更。明らかに難民に該当しないあるいは再申請で正当な理由がないと当局が判断した場合や、出国準備期間中の申請などに対しては、就労を不可とし新たな在留も許可しない運用を始めた。法務省によれば、2020年の日本での難民申請者は3936人で、そのうち認定されたのは47人。認定率は1.2%となっている。