労働条件明示義務の拡大に備える(山本圭子)

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■連載:人事考現学(著者:山本圭子 法政大学法学部講師)

本紙の読者には周知のことであるが、2024年4月1日施行の労基則等の改正により、採用時の労働条件の明示義務が拡大される。

契約期間の定めの有無にかかわらず、労働条件の明示にあたって、就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲が追加される。現行では、雇入れ直後の就業の場所・従事すべき業務を明示すればよいのだが、改正により、将来の就業の場所・従事すべき業務の変更の可能性があるのであれば、その範囲も明示事項となった。これには就業規則の異動規定との整合性も留意されたい。労働条件通知書や就業規則に記載した変更の範囲を超える異動や職種転換等には労働者の個別の同意が必要となる。

また、有期労働契約の場合に、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限を定める場合には、これを明示しなければならない。2012年の労契法改正で18条に無期転換制度が定められた前後に、通算契約期間や更新回数上限を新設して裁判等になった例もあったことから、今回これらの項目が追加され、厚労省のモデル労働条件通知書にも記載されるようだ。とはいっても、これまで上限設定していなかった有期雇用労働者に対し、上限を追加することはトラブルのもとになりかねない。

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