LGBTQ当事者とともに変える イトーキが目指す「多様な人財」とは

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オフィス家具大手のイトーキ(東京都中央区、従業員数1996人)は近年、LGBTQ(性的少数者)当事者を尊重・支援する職場環境づくりを表明する「アライ宣言」や、福利厚生を適用拡大するパートナーシップ制度など、LGBTQ施策に力を入れている。性的指向や性自認に関わらず「多様な人財」が差別されることなく力や特性を発揮できる職場づくりは、男性育休取得や女性のリーダーシップを支援する社内コミュニティなど、並行して力を入れる女性活躍施策にも通じる課題だ。「明日の『働く』を、デザインする。」をミッションに掲げる同社に、多様性に取組む理由を聞いた。

中村元紀人事部長
一階裕美子人事企画室長
伊藤翠D&I推進チームリーダー
佐久間晴菜広報IR部広報課員

■カミングアウト起点に 設備や制度、研修も

同社は今年1月から、事実婚や同性パートナーとその家族に対し、出産・育児・介護休暇や慶弔休暇、住宅・家族手当、見舞金など福利厚生を、法律上の配偶者・家族と同様に適用拡大する「パートナーシップ制度」を導入した。

「パートナーシップ制度」によって適用を拡大する福利厚生や規程。また制度導入にあわせて、婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同する企業を可視化するためのキャンペーン「Business for Marriage Equality(BME)」への賛同を表明した。

それに先立つ22年11月には「性的指向や性自認等における多様な性のあり方を尊重し、支援する」ことを社内外に示す「LGBTQアライ宣言」を表明している。

取組みを進める人事課の伊藤翠D&I推進チームリーダーは「ある当事者社員のカミングアウトが大きなきっかけになりました」とこう続ける。

「LGBTQ当事者にとって、イトーキは働きやすい環境なのかと自省すると、決してそうともいえなかった。トイレなど設備面をはじめ職場環境整備も遅れていることが分かり、危機意識を持って進めました」

幸い自社施設の空きスペースを活用し、要望のあった専用トイレや更衣室などの現場対応も進んだ。

中村元紀人事部長は「LGBTQに関する社員教育なども遅れていた状況のなかで、本人が勇気を持ってカミングアウトしてくれたことが大きい。また社内での生活のなかで具体的に『こうしてほしい』といった要望や意思表示をしてくれたので、周りの社員も自発的に受け入れたり、会社としても動きやすい面がありました」

その後、人事制度面の整備や社内外への宣言表明をはじめ、就業規則での差別禁止規程やハラスメント規程の修正のほか、この4月からは全社対象のLGBTQ研修も始めた。

「多様な人財は、今後企業にとっての財産になる」と中村部長が強調するように、同社はダイバーシティ(多様性)を組織や経営の要の一つに位置付ける。こうした視点は、近年全社的に力を入れてきた女性活躍施策にも通底し、経営トップが変わったことでさらに加速しているという。

■女性コミュニティ発足 どう変える「無意識の差別」

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