男女間賃金格差の要因特定を 大湾秀雄早稲田大学教授が講演

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2022年7月に300人超企業で男女間賃金格差開示が義務化され、採用市場においても影響が高まるなか、格差縮小が企業にとって重要課題の一つとなっている。早稲田大学政治経済学術院の大湾秀雄教授(人事経済学)は、「男女間賃金格差は複合的な要因が重なって現れる。自社の格差の要因を特定し、ターゲットを絞って施策に取組むことが重要」と指摘する。3月に都内で行われた「働きがいのある会社」女性ランキング発表会での講演から、内容を紹介する。

大湾秀雄早稲田大学教授、3月2日、都内で

■「長時間労働プレミアム」が職域分離を生む

格差の主要な原因として、まず「長時間労働プレミアム」と「性別役割分業」があげられると大湾教授は指摘する。

夜間や休日を含め長時間働くほど、単位時間当たりの賃金は高くなる傾向がある。この長時間労働に対する貢献への対価が「長時間労働プレミアム」だ。例えば、緊急時の対応や継続的なコーディネーションが必要な経営者やコンサルタントなどの仕事は長時間労働プレミアムが大きく、ワークライフバランスを保つ柔軟な働き方がしづらい。

「職が標準化されていない日本では、従業員の代替性が低いために仕事が属人化されやすく、より長時間労働プレミアムが大きくなる傾向がある」と大湾教授は言う。

こうした状況のなか、性別役割分業の意識が強い日本社会で家事や育児の多くを担う女性は、長時間労働プレミアムのある仕事に就くことが難しい。比較的業務が標準化されており、柔軟な働き方のしやすい経理などの仕事に就く割合が高く、結果的に性別職域分離が進み、男女間賃金格差が広がることになる。

女性が長時間労働プレミアムのある仕事に就いている場合は、出産を機に仕事の継続が困難になり、賃金が低く昇進・昇格が難しい仕事に移らざるを得ない状況、つまり「チャイルドペナルティ」(あるいは「マミートラック」)が生じる。日本の場合、子どもの出産を境に、退職するケースを含め賃金が約6割減少するとの調査結果がある(財務省財務総合研究所「仕事・働き方・賃金に関する研究会」報告書、2022年6月)。


■未だ根強い「男性はリーダー、女性は世話役」

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