今年創業150周年を迎える賀茂鶴酒造(広島県東広島市、従業員数81人)は、日本酒の需要低迷やコロナ禍の難局のなか、「日本酒文化を守る」をパーパス(存在意義)に掲げ、働きがいを生む組織への新たな模索を進めている。ものづくりを極める職人の世界と、若者が魅力や働きがいをより感じられる組織マネジメントをどのように両立させていくのか。昨年新たに就任した石井裕一郎社長に、挑戦の現在を聞く。
■自由に意見言える組織を 職人と管理職の両立
「麹菌を扱う醸造の現場では、長時間に及ぶ手作業による丁寧な管理など職人的なこだわりが求められる一方で、ミレニアル世代やZ世代など若者が魅力を感じるためには、ワークライフバランスや意見を自由に言えるフラットな組織づくりも重要です。毎週一回の杜氏(とうじ 酒造りの責任者、管理職)のミーティング、若手社員とのディスカッションに私も直接入り、意見の出し方から着地点の探り方までみんなで取組み始めているというのが現実です」
石井社長はNHKのディレクター、チーフプロデューサーとして30年近く勤務したのち、賀茂鶴酒造の社長・会長を務めていた父親の死去に伴い2017年に同社に入社。22年10月に新社長に就任した。長く携わった番組作りという職人世界や組織管理改革の経験があるからこそ、こだわりを大切にするものづくりの魅力、その反面にあるマネジメント面の難しさの双方を実感している。
「醸造蔵社員や蔵人チームを束ねる杜氏は、職人であるとともに労務・安全管理やマネジメントも求められる。難しい役割ですが、必ずしも二律背反ではない視点で取組むことが重要です」
事業の新展開にも注力する。18年には旧1号蔵を見学室直売所に改装し、地域に開かれた酒蔵見学イベントの開催や常設試飲BARなどを設置。また併設するレストランでは、チーズなど日本酒とのペアリングを感じる食文化の発信にも力を入れる。
■部署横断でプロジェクト 新商品企画から販売まで
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