急激な物価高を勘案した賃上げが相次いでいるが、初任給を拡充する企業も少なくない。少子高齢化の流れを考慮すると今後、人材確保競争がより一層激化することが予想される。
広告制作のTORIHADA(東京都渋谷区)は、今年4月入社の新卒の初年度年収を500万円へと改定した。賃金構造基本統計調査での大学卒の新卒年収は平均約270万円で、類似業種の主要企業でも300万円台に設定している。全体水準はもちろん、業界水準としても給与を最高水準に引き上げることで、優秀な人材層の獲得・育成に繋げる狙いがある。
日本電信電話(東京都千代田区)は、専門性を重視する人事給与制度の見直しに併せて、4月以降にNTTグループ主要会社に入社する社員の採用給の引上げに着手。例えば、大学卒の標準的なケースを25万円にするなど、現行より14%増額する。また採用時点で高い専門性を持つ人材のケースについては、現行より24%高い27万2千円へと採用給をさらに高く設定している。
金融サービスを展開する岩井コスモホールディングス(大阪府大阪市)は、4月の新卒初任給を24万6千円と現行から2万1千円増額する。また若手社員を中心に、7月に予定している賃上げの一部を半年前倒し。給与水準をベースアップで1.5%、新たに導入する営業手当で1.1%それぞれ上昇させ、7月に実施する定期昇給と合わせると4%を超える賃上げとなる見込みだ。
総合士業のベンチャーサポートグループ(東京都渋谷区)は、昨年10月にグループ各社の初任給の引上げに踏み切っている。税理士法人の税務コンサルタント職の東京・横浜勤務を例にとると、経験者を30万円から36万円、未経験者を25万円から30万円へと大幅に初任給を拡充している。
タクシー業の名古屋エムケイ(愛知県名古屋市)は昨年11月度から、業界未経験の新入社員の収入を乗務開始から6カ月間フォローする「保証給」を増額。名古屋での業界トップの待遇とすることを念頭に、昼勤専属勤務を25万円から35万円、昼夜交代勤務を30万円から38万円に引き上げた。