新年度を見据え、人事制度を改正する各社の動きが活発化している。共通点を挙げるとすれば、給与体系も含めて見直ししている点。年功主義的要素に代えて、従業員の意欲や専門性に着目して待遇を向上させているのが特徴だ。
十六フィナンシャルグループと十六銀行(岐阜県岐阜市)は12月1日、2023年4月1日から新人事制度を導入すると発表した。
評価制度については、経営理念に掲げる価値観を全社員が共有・体現するため、「差をつける評価」から「社員の才能を見出し成長を促す評価」へ大きく転換する。具体的には、経営理念と重なる自身の目指す姿を目標化した「マイビジョン・コミット」を含めて、4通りの評価体系を整備。このほか、経営理念に基づいた使命や基本能力を16段階に区分けした等級で評価する「基本能力レビュー」、趣味や資格、地域貢献活動といった仕事から離れた特性を評価する「ダイバーシティレビュー」、各人の職務に応じて設定した目標に対する活動内容をプラス評価する「活動評価レビュー」を体系化している。
年功要素が強かった給与については、それぞれ16段階の基本能力等級と職務等級の組み合わせで処遇が決まるシンプルな体系へ刷新する。基本能力等級は、30歳まで定期昇給を実施する一方、最短昇進年数を設けず、いわゆる飛び級や35歳で部長職に就くことができるように構築。職務等級はグループ全体の職務を、「ライン職・営業職」と「スタッフ職」に大別した上で、定年まで同一の職務給テーブルを適用するとともに、満55歳以降も職務給が下がらない仕組みとしている。
日本電信電話(東京都千代田区)も4月から、人事給与制度を見直す。年次・年数要件を廃止して、「専門性」を軸とした新たな制度を国内の主要グループ会社で運用を開始する。
人事給与制度については、18の専門分野ごとに専門性や行動レベルを明確化したグレード基準を設定し、専門性の獲得・発揮度に応じて昇給・昇格する仕組みに衣替えする。また専門性の高い社員に高い処遇を可能とする「スペシャリストコース」を新設するなど、専門性を高められる人材配置・異動する方針に変更するとともに、研修やコンサルティング機能を充実させるなど、社員の自律的なキャリア形成の支援を強化する。
ジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)は4月に給与を大規模改定するとともに、成果を重視した人事制度へ改正。グループ横断の改革・戦略・企画を先導する職種の新設に加えて、既存の職種は役割や責任などを明確にした人事制度へと再編する。
また年齢給を職能給に改めて、この職能給の総額を拡充。正社員は2年間で平均年収を10%、非正規社員は10月に平均月収を4%それぞれアップさせる考えだ。
みずほフィナンシャルグループ(東京都千代田区)をはじめグループ5社は、「かなで」と名付けた共通の新たな人事の枠組みへの移行を決定した。「社員の挑戦を支え、貢献が報われ、働きやすさを感じる」を骨子に据え、各人の成長と機動的な人材配置を実現。24年4月の完全移行を念頭に、個別施策は順次運営を開始する。