働きがい生むフィロソフィ バーテック「ブラシで世界を変えよう」【前編】

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ブラシ製造販売のバーテック(大阪市、従業員数33人)はリーマンショックの後、利益管理徹底で離職が相次いだ経験から、「全従業員の物心両面の幸福」を重視する理念経営に大きく舵を切った。その実践に向けて大切にする価値観や考え方をまとめた「バーテックフィロソフィ」を軸に、従業員一人ひとりが主体性を発揮する「全員参加経営」に向けた取り組みを展開。ここ10年程で業績や従業員数は大きく伸び、今年の「働きがいのある会社」ランキングでは小規模企業全国4位となった。末松仁彦社長に話を聞いた。

■V字回復も相次ぐ離職 社内で対話や試行錯誤

末松仁彦社長

食品工場の衛生管理ブラシや工業用特殊ブラシなどを開発設計・製造・販売し、今年設立60年の同社を末松社長が引き継いだのは2008年。27歳の時だった。

異例の若さで事業を承継した背景には、2代前の創業社長だった祖父・富三郎氏が早逝し、先代社長の父・大幸氏が事業承継に苦労した経験から、08年の仁彦社長就任後は大幸氏が会長として共同経営の期間を設けることで、万全な事業承継をとの思いがあった(大幸氏は18年に会長退任)。

折しもリーマンショックによる業績悪化のなか、会社や社員を守るために利益管理を徹底したことで業績はV字回復したものの、退職者が相次いだ経緯を末松社長はこう振り返る。

「利益確保のための数字や行動管理の徹底が、息苦しさを生んでいた面はあります。当時は子育てとの両立支援の仕組みも整っておらず、従業員の退職後に焦って採用すれば、人材のミスマッチで育成しては辞めるの悪循環。経営者である私の責任として、退職された方や教育にあたった従業員にも苦労や悲しい思いをさせたと申し訳なく思っています」

状況をどう打開できるのか。根本的な原因はどこにあるのか。末松社長は全従業員と話し合うとともに、自身は実業家の稲盛和夫氏が主宰していた「盛和塾」に10年に入塾。そこでの学びを社内で共有・実践するなかで、理念の改定とそれを50項目に具体化したフィロソフィ(14年にVer.1完成)にまとめていった。人事部門などを担う経営管理部をはじめ、社内での対話や試行錯誤の連続だった。

「理念を変えただけで何かが変わるわけではなく、それをどう落とし込んでいくか実践が大事です。定着まで含め5年程はかかったでしょうか。話し合いや取り組みをしつこく繰り返しました」

■社内外に風を通す 調査「鏡をみる感覚」

全従業員の参加で毎年「ビジョン合宿」を行う。2018年はSDGsをテーマに開催し、企業ビジョンをつくった(写真提供:バーテック)

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