配偶者の転勤で遠隔地へ引越しても、キャリアを止めず持続的に働ける環境を整えようと、楓工務店(奈良県奈良市、従業員数102人)は「テレワーク転勤」制度を導入している。注文住宅などを手掛ける同社は、結婚や出産、転勤などライフイベントに左右されず就業継続できる環境を整備し、女性社員比率は5割超。来年度入社の新卒者の内定倍率は63倍に達した。従業員満足度と顧客満足度を両輪とすることで事業成長を続ける背景について、田尻忠義社長に聞いた。
■「辞めたくない」
設計監理部主任の出原祐子さんが、夫の転勤で富山県に引っ越したのは2018年。転勤への帯同は07年に設立された同社では初めてのケースで、当時はテレワークの規定もなかった。
「できることなら辞めたくない」と出原さんに相談を受けた田尻社長は、働く場所が変わる社員は今後も出てくるだろうと考え、「先進的に挑戦して後続の社員に(テレワークの)道をつくってほしい」と話し、取り組みが始まった。
インテリア部門の責任者である出原さんがテレワークとなることで、部下との意思疎通に齟齬がでないかも不安材料だった。事前に本社の1階と2階に分かれ、テレビ会議システムを常時接続した状態で疑似テレワークを実施。課題を洗い出し、対策を進めた。
意外にも、双方から「生産性が上がった」という声があった。物理的に離れている分、お互いに質問や伝達事項をある程度まとめてやり取りするため、作業時間と相談時間のメリハリをつけやすくなったためだ。
仕事の手順の見える化をはじめ、実践を続けるなかで課題をマニュアルの形にまとめて社内共有。月1~2回程度の出社頻度といった勤務形態も、実際の運用のなかで定めていった。
19年にはコンシェルジュ部の門林由利さんが、同様に夫の転勤に伴い制度を活用。営業部門の管理職としてテレワークで勤務しながら、顧客対応のスタッフ指導やオンラインでの打ち合わせにも同席した。門林さんは、夫の再転勤で今年4月に本社勤務に復帰している。
■「質問タイム」を1時間ごとに 動画150本で成長支援
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