従業員の多様性や満足度、離職率など「人的資本の情報開示」に関するガイドラインISO30414の国内初の認証企業が生まれた。組織・人事コンサルのリンクアンドモチベーション(東京都中央区、小笹芳央代表)だ。人を企業価値向上の中心に据え、事業経営と連動させていく人的資本経営が注目を集めるなか、同社は創業以来「従業員エンゲージメント」の視点で8千を超える事業者の組織改革に取り組んできた。いまなぜ人的資本の情報開示に取り組むべきなのか、川村宜主執行役員に聞いた。
■選ばれなくなる前に コストではなく投資として
「ITが進化するなかで、“働きがい”など社内の情報はどんどんガラス張りになってきています」と川村さんは指摘する。
例えば会社評価サイト「オープンワーク」では、就職・転職者向けに企業の社員・元社員からのクチコミ情報を提供。待遇や評価をはじめ、社内での社員の士気や相互尊重、組織の風通し、人材育成などリアルな評価を誰でも見ることができる。
「企業は人に投資をしていかないと、労働力市場からはじき出されてしまう状況がある。優秀な人から選ばれて事業を持続的に成長・存続させていくためには、人を(コストではなく)資本と捉えて投資し続けていく視点が不可欠です」
人的資本経営が重要視される背景にあるビジネス環境の変化として、川村さんは3つのポイントをあげる。①DXやIT環境に伴ってソフト化・短サイクル化されていく商品市場の変化、②労働力人口が減少するなか、働くモチベーションが多様化していく労働市場の変化、③欧米など情報開示義務化の流れの中で、投資家からの評価基準として重要視されている資本市場の変化――の3つだ。
2010年代の日本の人材育成投資額の対GDP比は、欧米諸国の3~6分の1程度(「生産性白書」)と低水準にとどまるなか、政府は今夏をメドに、人的資本情報開示の指針策定を予定。①共通開示項目、②企業独自の項目、③先進的な開示項目の3つに分けて検討を進めている。
■何を大事にするか ポイントに沿って開示
具体的にどのような分野で、人的資本経営の実践と開示に着手すべきなのか。ISO指針で基準とされている11項目58指標が表1だ。対外開示について、大企業に、また大企業と中小企業ともに特に推奨されている項目を○/◎印で示した。
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