■「好きになれ」とは言わないが、話し合いであきらめたら分断が起きる
「職員自身が幸せでなければ、地域の発展に資する良い仕事はできない」――沖縄本島中部に位置する北中城村(きたなかぐすくそん)観光協会(島田勝也会長)はこのほど、「日本一ウェルネスな観光協会」をキーワードに経営方針を刷新し、就業規則・給与評価制度を再構築した。その背景には、高い離職率など組織としての危機意識と、それを打開していくための地道な対話の積み重ねがあった。前編では経営方針を、後編では就業規則・評価制度を中心に、同協会の又吉演事務局長、原口達樹CFO(財務責任者)にお話を聞く。
■新方針が組織の背骨に 離職率83%からの「リセット」
沖縄本島中部に位置する北中城村は、人口約1万8千人。全国で最も人口密度の高い村であり、女性平均寿命日本一の自治体としても知られる。
北中城村観光協会は2016年に設立。地域発信型映画「きたなかスケッチ」の制作や、県内協会有数の登録者数であるYouTube動画サイト「ライカムチャンネル」の運営など、ユニークな活動を展開してきた。
しかし、賃金をはじめ観光協会職員の雇用条件は全国的に低迷する傾向もあり、21年までの5年間で同協会の離職率は83%。そこには組織としての課題もあったと原口さんはこう話す。
「小さい組織ということもあってどうしても意識が内側に向きがちで、『あの人はこれができる、これができない』と職員同士でギスギスしてしまう雰囲気もあった。外に向けて地域の魅力をアピールしていくためにも、そうした課題に向き合うことが必要でした」
転換の重要なきっかけの一つは、経営陣の交代だった。21年8月、メディア・報道や地域ブランディングに造詣の深い島田勝也・沖縄大学講師を会長に、同村でサステナブルなホテル・リゾート施設を経営する西渕泰氏を副会長に新たに迎え、第2創業期に向け全職員を交えた「対話会」を行った。
対話を通じて新・会長/副会長はじめ職員全員で共有されたのは、「一人ひとりが組織のためを思っているのに生かされないとすれば、それは誰が悪いということではなく『組織の問題』。だから私たちがどこに向かっていくべきかに立ち返り、経営方針を整理して共有するための『リセット』が必要だ」ということだったと原口さんは話す。
又吉事務局長は「これまで枠に縛られない自由さを大事にしてきた。職員それぞれがやる気と課題を持っており、その方向性・ベクトルを合わせるための組織としての芯、背骨が必要だった」と振り返る。
■2on1で全職員と対話 良い仕事に向け「まず話を」
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。