公益通報制度 社内通報体制のポイント ESG指標でプラスに評価

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法令違反や不正といった深刻な企業リスクに対し、従業員らの通報を通じ早期の発見・是正につながるとされる公益通報制度。改正公益通報者保護法では通報者の保護を強化するため、企業に内部通報体制の整備を義務付けているのが大きな特徴だ。2月7日に東京三弁護士会公益通報者保護協議会が主催したシンポジウムでは、企業3社の現場担当者が登壇した。社内体制整備の先進事例を紹介する。

■”刑事罰”制度の信頼高める契機へ

改正法では通報者保護の観点から、通報窓口の担当業務に携わる「従事者」に通報者を特定する情報の守秘義務を課し、違反に30万円以下の刑事罰を規定した点が大きなポイントだ。

「刑事罰は重いという気持ちは正直あります」と話すのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ コンプライアンス統括部の片山幹部長だ。

「ただ、だからといって従事者の人数を減らしたり、外部機関だけに任せてしまうのは本末転倒。我々担当者が刑事罰を課した守秘義務を負っていることは、窓口利用者に対して制度の信頼度をアピールする一つの契機になります」

同社では、コンプライアンス統括部、外部弁護士事務所、監査等委員会の各所に窓口を設置。内部/外部/監査部に併設することで独立性を担保するとともに、通報者が利用しやすい通報チャネルの多様化に力を入れているという。

具体的には、社内ポータル、メール、電話、郵便で通報可能。社内ポータルではトップページからワンクリックで通報フォームが開く。郵便については、必要事項を記入の上ふたつ折りでホチキス止めすれば投函できる専用用紙を全行員に配布している。

3社の通報・相談窓口体制の概要

■調査・是正、慎重に連携を

国内外で約300社の子会社をもつサントリーグループでは、グループ共通のホットライン窓口や弁護士事務所による社外窓口のほか、グループ子会社が独自でもうける窓口も併存させる方針だ。

「子会社の従業員には、グループ共通の窓口か子会社独自の窓口、外部の弁護士窓口の選択肢があるので、通報のしやすさにつながる」(サントリーホールディングス リスクマネジメント本部コンプライアンス室 菊池裕之専任課長)

通報・相談受付後の対応フローとしては、都度通報者と連絡をとりながら、被通報者・部署への調査・是正措置、再発防止策を実施したうえで、フォローアップを行う。同社では通報対象者として、役員や従業員だけでなく取引先従業員や顧客も含めている点も特徴的だ。

調査・是正措置を進めるうえでは、通報者保護を大前提に守秘義務を徹底しながら、人事・監査、総務・法務・品質、外部弁護士、産業医など関係部門・専門家と連携する。その際に必要に応じて、関係する部門長などを臨時に「従事者」に指定することもあり得るという。

「今回の法改正を受け、通報者を特定する情報の『範囲外共有の防止』の観点から、こうした連携についてもより慎重に進めていきたい」と菊池課長は指摘する。

■受け付け、垣根広く

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