IT企業で、人事制度を改正する動きが目立っている。ITサービスのTIS(東京都新宿区)は4月に、「働く意義」を強化するため、評価・等級・報酬制度を全面刷新する。
評価制度は、組織目標に基づく業績評価と、経営理念に基づくコンピテンシー評価に整理する。業績評価は、上長とともに半期ごとに「Must(期待役割)」「Will(志)」「Can(能力)」を摺り合わせた上で、成果目標とプロセス目標を設定し、挑戦の過程も含めて各評価項目を絶対評価。一方、コンピテンシー評価は経営理念に即した期待される行動を設定し、コンピテンシーの発揮度合いを絶対評価する体系へと改める。
等級制度は期待役割を明確化するため、シンプルな等級体系に変更。下位等級は役割と能力を掛け合わせた体系にしたのに対し、上位職種は原則として職務・役割基準とする。特にマネジメント職は、各ポジションに求める人材要件を明確にしたジョブディスクリプション(職務記述書)を策定するなど、ジョブ型の要素を取り込む。
報酬制度については、個人評価を反映する比率を賞与で高める一方で、基本給への影響をやや抑えるメリハリある体系へ見直す。また内外の優秀人材確保を念頭に、基本給の水準を平均で約6%アップするほか、高度人材と若手層には最大で17%アップさせる方針だ。
独立系システムインテグレーターのアイティフォー(東京都千代田区)も4月から、在籍する正社員と嘱託社員を対象に評価制度と資格等級制度を改定する。重要課題に掲げる「人財の深化」に向けて、個々の能力を最大限に引き出して活躍できる職場環境の実現と、組織全体のエンゲージメントの向上を目指す。
評価制度については、「成果」以外に、成果に至るまでのプロセスとなる「行動」「業務活動」も評価基準として設定。多角的な指標を示すなど公平性を担保して、従業員の評価に対する納得感を高める。
資格等級制度は、各等級の定義や職務、役割などをより具体的に明示するとともに、昇格要件も開示する。また一部の職種に、ジョブ型の要素をとり込んだ職務等級制を導入し、キャリアパスの選択肢を増やす。従来のマネジメント職への昇格とは異なるキャリアパスを整備し、高度な専門性を適正に評価した上で処遇に反映させる。
一見すると風変わりな制度を導入すると2月17日に発表したのは、IT転職エージェントのCloudLink(大阪府大阪市)。人材紹介事業営業部に所属する全社員を対象に、一定期間「数字を持たない」営業制度を新たに適用する。
入社後3年ごとに、数値目標やチームから一旦離脱する期間を6カ月程度設け、メンタルケアや自分の可能性を試す挑戦の機会として活用してもらう。売上目標を手放す期間は通常の給与体系とし、面談後のアンケートなどの顧客満足度などで評価を行う。
また同社は組織活性化の施策として、上長許可の手続きを踏まずに自由に社内公募に応募できる「ダイレクトキャリアチェンジ制度」、メンバーとチームリーダーの話し合いで表面化していない課題を明らかにする「アシミレーション制度」を導入する予定だ。