予期せず救急隊員から『イジョウ死』と告げられた。『異常』ではなく『異状』死だ。
異状死体の定義は「確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体」とある。つまり自宅や病院以外で持病以外の死因は全て異状死扱いとされる。
欧米など死因究明の先進国では、遺体はまず専門の医師に委ねられ、不審な点があれば警察の調査対象となるが、日本では警察の事情聴取や検視の後、医師による検案が行われる。
著者の体験と医療関係者への取材を基に、全てが不足する死因究明制度の現状、団塊世代の高齢化、増加傾向の孤立死と多死社会など問題点を炙り出す。死して人間の尊厳は守られるであろうか。