■元従業員も「雇用する労働者」 組合に生ずる緊迫の危険性を避ける
退職した労働者が労働組合の組合員、あるいは代表者になれるのか、その者が労働組合の代表として申し入れた団体交渉に会社は応ずる義務があるのかが問われました。本判決は、退職した者であっても、交渉担当者たりうるとして、36協定の締結、暖房手当の支給といった交渉事項を拒否する理由にはならないとしました。
■判決のポイント
退職した労働者が代表の労働組合との団体交渉についても、「申入れに応じる義務を負う」と断じています。
本件では団体交渉を行うことができない状況が10カ月を超えていることで、「組合員の生活維持のために必要と認められる暖房手当の交渉ができないことを踏まえると、組合に生ずる著しい損害又は緊迫の危険性を避けるために団体交渉を求める地位にあることを仮に定める必要がある」としました。
退職した労働者が労組法7条2号の「使用者が雇用する労働者」に該当するかについては、過去の判例も紛争を適正に処理するためには、元従業員も「使用者が雇用する労働者」としています(国・中労委事件、東京地裁平成24・5・16判決)。
本判決では、①36協定の締結、②暖房手当の支給といった、現在生じている労使間の紛争について、退職した労働者が要求できるのかについてが問われていますが、紛争解決の適正な処理のためには、退職した労働者が代表となっている組合であっても、会社には団体交渉応諾義務があるとの結論になっています。
■判決の要旨 団体交渉の権限あれば 団体交渉の申入れである限り
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