コスト高騰の影響について帝国データバンクが11月上旬に1452社の回答を集計した企業アンケート結果によれば、「すでに限界」とした企業は6.5%、「厳しいが事業の継続は可能」とした企業は54.3%で合計6割に上った。規模が小さいほど「すでに限界」とした割合は高く、小規模企業では11.4%と1割を超えた。業種別では「建材・家具」「化学品製造」「不動産」などで特に影響が深刻で、「飲食料品・飼料製造」では「すでに限界」「厳しい」の両回答の合計が8割を超えた。
「すでに限界」と答えた6.5%の企業に、さらに詳しく状況を尋ねると、「別の仕入れ先を検討中」が2.5%、「主力部門以外の強化・主力部門の縮小/撤退、または業態転換を検討中」が1.5%、「企業の存続危機」が2.5%だった。
同回答の割合を規模別にみると、「大企業」は2.1%、「中小企業」は7.2%で、そのうち「小規模企業」に絞ると11.4%だった。業種別にみると、「建材・家具、窯業・土石製品製造」が 12.5%、「化学品製造」は 12.2%とともに1割を越え、「不動産」および「飲食料品・飼料製造」はいずれも 9.4%だった。「飲食料品・飼料製造」は、「すでに限界」「厳しい」の両回答の合計が81.1%と8割を越えた。
不動産と建築の2つの部門で事業を展開するある企業では、「不動産は円安で海外からの投資需要が旺盛なものの、建築部門は仕入単価の高騰を売値に転嫁できず、事業自体が成り立っていない」と厳しい現状を明かす。「建売事業などは中止し、土地のみの販売に切り替えている。不動産需要は旺盛なために収支は合っているが、建築だけを行っていれば対応できていなかった」と述べた。
塗料卸売業界のある企業は、「メーカー指定など自社の意向で仕入先の変更はできない。需要は15%程落ち込んだまま人手を確保するために賃上げを実施し、コロナ融資の返済開始を目前に控えまさに危機的状況」と、下請け構造のなかでコスト上昇のしわ寄せを受け、コロナ禍の影響や人手不足に苦しむ経営の危機的状況を訴えた。
帝国データバンクが9月に行った調査では、コスト上昇分を販売価格に全く転嫁できていない企業は2割近くに及ぶ。7 割の企業では、多少なりとも価格転嫁できているとするが、総合するとコスト上昇分を100円としたうちの36.6円しか販売価格に反映できていないことが分かった。
政府が10月に取りまとめた総合経済対策では、コストが上昇しているにも関わらず取引価格を下請企業と協議することなく据え置くなど不適切な対応を繰り返す企業名の公表や、公正取引委員会の執行体制を強化して独占禁止法や下請代金法違反の取り締まりを強める方針を決定。中小企業を含め物価高に応じた賃上げを可能とするため、コスト上昇分の価格転嫁ができる適正な取引環境を推進することを決めている。
今回調査の企業規模区分は以下のとおり。