食事は単なる栄養補給ではない。味は多感覚知覚の対象であり生来の五感をフル活用するなど、芸術と同等に評価されるべきだと主張する。
主観主義と客観主義による「味覚はひとそれぞれ」と、一方だけを簡単に言い切ることなく、食を通した新たな試みから芸術を考察する。
中でも「優しい味」の何が優しいのかは誰もが安易に使うキーワードだ。メタファー(隠喩)として捉えるか、優しい気持ちで作ったことの省略形、否定的評価のお世辞の可能性もある。
著者曰く「飲食も『美学』という学問の研究対象」だが、芸術として未だ曖昧な境界線上にあることを認めている。今後の議論の推移を見守りたい。