【新刊紹介】『「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門』源河亨 著

25
『「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門』源河亨 著/中央公論新社/新書判232頁/2022年8月/定価902円(税込)

食事は単なる栄養補給ではない。味は多感覚知覚の対象であり生来の五感をフル活用するなど、芸術と同等に評価されるべきだと主張する。

主観主義と客観主義による「味覚はひとそれぞれ」と、一方だけを簡単に言い切ることなく、食を通した新たな試みから芸術を考察する。

中でも「優しい味」の何が優しいのかは誰もが安易に使うキーワードだ。メタファー(隠喩)として捉えるか、優しい気持ちで作ったことの省略形、否定的評価のお世辞の可能性もある。

著者曰く「飲食も『美学』という学問の研究対象」だが、芸術として未だ曖昧な境界線上にあることを認めている。今後の議論の推移を見守りたい。