■新海聡さん(NPO法人「情報公開市民センター」理事長・弁護士) おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(51)
ビートルズが1966年に来日公演を行った際に警視庁が撮影し、「幻の映像」としてファンの間で知られてきた16ミリフィルムが半世紀余りを経て公開された。きっかけはファンの弁護士の情報公開請求だった。(井澤 宏明)
この弁護士はNPO法人「情報公開市民センター」(名古屋市)理事長の新海聡さん(61)。「全国市民オンブズマン連絡会議」事務局長を30年近く務め、情報公開請求により「官官接待」などの不正を市民と一緒に明らかにしてきた。
愛知県岡崎市生まれの新海さんは、小学校2、3年生のとき、アニメ番組「サザエさん」(69年開始)で流れるコマーシャルでビートルズと出会った。ヒゲを生やした長髪のメンバーの映像と共に「レット・イット・ビー」が流れるのを見て、「何て美しいんだ、かっこいいと思った」という。
当時は大人たちから「床屋に行かないとビートルズになるよ」と「悪の権化」や不良っぽい音楽の「代名詞」のように嫌われる存在だったが、「実はそういうものこそ本質は美しいんじゃないか」と子ども心に思ったと振り返る。
中学生になると、お小遣いやお年玉をつぎ込んでLPレコードを全部そろえた。高校ではバンドを組み、ポール・マッカートニーと同じベースを担当。成人しても熱は冷めず、ロンドンまで初回プレスのレコードを買いに出かけたほどだ。
「幻の映像」が残っていることを日経新聞が報じたのは2014年1月3日のこと。
「警視庁なら情報公開の対象。まさか個人情報で非公開にすることはないだろう」。同センターは2月、同庁に情報公開請求した。ところが結果は「全面非開示」。映像が公開されることにより「特定の個人が識別」でき「警備手法等が明らかになる」ことが東京都情報公開条例の「非開示情報」に当たると警視総監に判断された。
あきらめることなく翌15年に再挑戦すると「一部開示」。同庁は4人のメンバー以外の「顔」を非開示にする決定を出した。その後のやり取りの中では「フィルムをデジタル化してモザイクをかけるのに70~80万円ぐらいかかる。請求しますよ」と同庁の担当者から脅されたこともあった。
■最初は「全面非開示」
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