カスハラが労災基準に追加、「対人関係」の類型へ

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顧客や取引先からの悪質なクレームであるカスタマー・ハラスメントが心身に深刻なダメージを与えることが明らかになるなか、精神障害の労働災害認定基準を定める厚生労働省検討会はこのほど、心理的負荷につながる「対人関係」の具体的出来事として、新たにカスハラを追加する方針を固めた。

現行の心理的負荷評価表では、出来事の類型「仕事の失敗、過重な責任の発生等」の一つとして、具体的な出来事「顧客や取引先からのクレーム」を定めている。見直し後はこれに加え、類型「対人関係」の一つとして「顧客や取引先、施設利用者等から(著しい)迷惑行為を受けた」という具体的出来事を定める方針だ。

6月30日の同検討会のなかで委員の丸山総一郎・神戸親和女子大学教授は「実務の中で(施設利用者からの被害など)商取引だけでないところでもありますから、(「対人関係」の類型の一つとすることで)ある意味の注意喚起になります」と指摘している。

■経営部門含めた組織的取り組みを

丸山委員の指摘のとおり、介護をはじめ医療・福祉職場や自治体窓口など公務職場での被害実態は、様々な調査結果に表れている(例えば2018年度の介護現場での厚生労働省調査や2021年の日本国家公務員労働組合連合会の実態調査など)。

介護職場における利用者(カスタマー)からのハラスメント被害(顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議資料から)

小売業や飲食業などカスハラ被害の多い業種の民間職場を含め、その対策にあたっては、対応者一人ではなく同僚や上司、経営部門など組織としての取り組みが重要となる。

8月下旬に企業の現役顧客対応責任者20人らが中心となって執筆・刊行された『現場責任者のための「悪質クレーム」対応実務ハンドブック~カスタマーハラスメント対策の手引き』(消費者関連専門家会議(ACAP) 編著、PHP研究所)のなかでも、組織のルールに則り判断基準に沿って対応することの重要性が指摘されている。