国葬反対が多数占める報道各社の世論調査

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参院選の応援演説中に銃撃を受けて死亡した故安倍晋三元首相の葬儀を「国葬」(9月27日)として行うことの賛否を聞いた報道各社の世論調査で、「反対」が「賛成」を上回る結果が相次いでいる。岸田文雄首相が国葬での実施を表明した7月時点では賛否は拮抗していたものの、銃撃事件の背景にあった霊感商法で社会問題化した旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と、自民党を中心とした国会議員とのかかわりが政治問題化し、国民の批判が高まるにつれて反対が増えた形だ(9月9日現在)。(臺宏士・ライター)

岸田政権は7月22日に経費を全額税金で賄う国葬とすることを閣議決定。当初、2億5000万円としていた国葬に要する費用は、警備費も含めると16億6000万円にも膨らんでいる。

9月8日の衆院議院運営委員会で故安倍晋三元首相の国葬実施について答弁する岸田文雄首相(衆議院ホームページから)

■旧統一教会問題で 内閣支持率大幅下落

NHKが7月16日~18日に国葬方針への評価を聞いたところ、「評価する」が49%、「評価しない」が38%だった。8月5日~7日に行った同じ質問では、「評価しない」が50%で「評価する」が36%となり逆転した。

曽我英弘・解説委員は8月9日の報道番組「おはよう日本」で、「国葬は適切だという声の一方で、安倍氏への政治的な評価や弔意を強要し、基準や根拠もあいまいだという批判や疑問も根強いことがうかがえる」と分析した。

共同通信の調査でも反対派が増加した。7月30日~31日の調査では、「賛成」(17.9%)と「どちらかといえば賛成」(27.2%)を合わせた賛成派は45・1%で、「反対」(29.8%)「どちらかといえば反対」(23・5%)と合わせた反対派は53.3%。8月10日~11日の調査では質問が「国の公式行事として開催するのは適切だとする首相の説明に納得できますか」に変わったが、「納得できる」は42.5%、「納得できない」は56%で、実質的な反対派は前回よりも増えたと言える。

フジテレビ系のFNN・産経の合同世論調査も同じ傾向を示した。7月23日~24日の調査は、国葬を決めたことについて「よかったと思うか、よくなかったと思うか」を聞いたところ、「よかった」31.0%と「どちらかと言えばよかった」19.1%を合わせると50.1%。これに対して、「どちらかと言えばよくなかった」14.8%と「よくなかった」32・1%の合計は46.9%だった。8月21日~22日の賛否を問う質問に対する回答では、「反対」(51.1%)が「賛成」(40.8%)を上回った。

読売新聞と日本テレビ系のNNN(8月5日~7日)の世論調査は「評価する」が49%で、「評価しない」の46%をやや上回っていた。9月の調査(2日~4日)では「評価しない」が56%で大幅に増加し、「評価する」の38%と逆転した。

他社はどうか。

 ・日本経済新聞(7月29日~31日)=「反対」47%、「賛成」43%
 ・時事通信(8月5日~8日)=「反対」47.3%、「賛成」30.5%。
 ・TBS系のJNN(8月6日~7日)=「反対」45%、「賛成」42%。
 ・毎日新聞(8月20日~21日)=「反対」50%、「賛成」41%。
 ・朝日新聞(8月27日~28日)=「反対」50%、「賛成」41%。

時事通信は「政府の閣議決定に支持が広がっていない実態が浮き彫りになった」と分析した。  旧統一教会と自民党所属議員のつながりが明らかになるにつれて内閣支持率も低下。朝日新聞の世論調査では、7月には57%だった支持率は、47%に大幅下落。これに対して、不支持率は25%から39%に増加した。政治家と旧統一教会を巡る問題への岸田首相の対応についても、「評価する」は21%にとどまり、「評価しない」は3倍以上多い65%に上った。他の世論調査でも同様の傾向がみられた。

■岸田首相「暴力に屈しない決意示す」

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