コロナ対策しないカフェ(深沢孝之)

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新・働く人の心と体の心理学 第49回 著者:深沢孝之

先日八ヶ岳山麓のあるところで、メンタルヘルスの講演をしました。その辺りは標高千メートルを超える高原なので、灼熱の甲府盆地よりは気温が低く、快適な空気でした。

講演会の終了後、思いついて(暑い甲府に帰りたくなくて)、ドライブすることにしました。ふと私は、その地域ではちょっと知られたカフェがあることを思い出して、行ってみることにしました。旧国道の静かな通り沿いの田園の中に、その店はありました。店内に入ると、マスターらしい50歳ぐらいのおじさんが迎え入れてくれました。私はカウンターでキリマンジャロとチーズケーキを注文して、落ち着けそうな柔らかいクッションの椅子を見つけて座りました。コーヒーが来るのを待っていると、ちょっと違和感があります。「あれ、何かが違うな」と店内を見渡し、カウンターの向こうで働いているマスターの様子を見ていると、「ああそうか、ここは感染対策をしていないんだ」と気づきました。

各テーブルには、アクリルパネルもパーテーションもありません。入口には、今やどこの店にも必ずある非接触型の体温計とアルコール消毒器がありません。テーブルの上にも小型のアルコールスプレーも置いてありません。何より、マスターがマスクをしていないのです。お店はログハウスではありませんがシンプルな木造の一軒家で、店内の壁も板張り、そういえば外には、薪が山のように積んでありました。いかにもナチュラリストの雰囲気が漂っています。新型コロナに対するマスターの強いコンセプトというか、ポリシーを私は感じ取りました。

コーヒーは、マスターが試行錯誤の末にたどり着いたという「かなり深煎り」で、濃い中にすっきりとした苦みを味わえました。私はコロナ対策のない、考えてみれば「普通の空間」に癒されて、講演の疲れを忘れることができたのです。

おそらくこの店は、グリーン認証といった県のサポートは受けていないし、受ける気もないでしょう。世の流れに迎合しないで、「コロナが怖い奴は来なくていい」という自分のスタイルを貫いているところは素晴らしいと思いました。

ただ、そのような新型コロナ(ワクチンも含めて)に対して自分なりの態度が取れるのはマスターや私のような自営業者だからかもしれません。組織に所属し、都市に住んでいるとなかなかマスクを外したり、オフィスやお店で感染対策をしないでいることは難しいでしょう。

■変わらぬ人の感染対策行動

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