免疫力を高めるには

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新・働く人の心と体の心理学 第48回 著者:深沢孝之

新型コロナウイルス対策には何がよいかというと、何だか得体の知れないワクチンに頼るよりも、何はともあれ免疫力を高めることだと思います。私もこのパンデミックで、改めて免疫学に関心を持って学んでみましたが、生理学的、神経科学的なメカニズムはとても複雑で、理解するのはなかなか大変でした。ただ、人間の身体の神秘を感じ直すことができました。そして、免疫のプロセスは複雑でも、結局そこから導かれる免疫力を高めるための方法はけっこう単純で、以前から健康法として言われているものです。

いわく、早寝早起き、十分な睡眠、バランスの良い食事、快食快便、適度な運動、快活に過ごすこと、感謝やポジティブな気持ちを持つこと、などなどです。結局、当たり前の生活を当たり前に送ることに尽きるのでしょう。それがなかなか難しいのが現代社会ということですが。

■心身によいヨーガ

心身の健康に良い運動という面では、コロナ以前からヨーガの人気がずっと持続してあるみたいです。2000年代の新自由主義思想で世間が改革だ、規制緩和だと騒いでいた頃、アメリカのセレブが熱心に取り組んでいるとか、ニューヨークで大流行しているとかの情報がメディアで流されて、日本でもヨーガブームが起きました。今では全国津々浦々にヨーガ教室があります。

このコロナ禍ではヨーガ教室も打撃を受けたところも多かったと思いますが、今でも頑張っているところもあるようです。何よりヨーガは、室内でできるのでステイホーム向きです。他人との接触もほとんどないので、ソーシャルディスタンス向きでもあります。現在、オンラインのヨーガ教室も多く開かれており、ヨーガのポーズ(アーサナ)はパソコンやスマートフォンの画面に入るので、レッスンとして成立しやすいのでしょう。これは私のやっている武術とは大きな違いです。オンライン稽古を試している武術教室もあるみたいですが、動きが複雑で、いろいろな角度から確認しなければならない武術はオンライン向きではありません。その辺はヨーガがうらやましいです。

また現在のヨーガブームの背景となっているのは、これもまた最近のブームであるマインドフルネス瞑想です。マインドフルネス瞑想は、東南アジアの仏教の瞑想を中心に心理学や精神医学で研究、実践され、今や心理療法の主要治療技法のひとつになりました。それが一般の人たちへのストレスマネジメントの方法として広がり、ビジネス化したものもあります。

ご承知の通りヨーガはインド発祥で、仏教由来ではありません。宗教的にはヒンズー教ということになるのでしょうか。ただ、じっと座って心の動きを見つめる仏教系の瞑想と違って、さまざまなアーサナを作りながら進めるヨーガはアプローチの仕方が違い、身体感覚を重視します。

私は多少ハタ・ヨーガ(アーサナを中心にするヨーガ)の初歩を学んだことがある程度ですが、時々思い出したように練習しています。その体験でいうと、身体を大きくひねったり、伸ばしたりして、時にはやや複雑なポーズを取ったりしながら、身体をゆるめていくのが、少なくとも初期のやり方です。緊張と弛緩をゆったりとしたペースで進めてリラックス状態を深めていきます。さらに呼吸を整えて、ヨーガの目指す精神状態を作っていこうとします。おそらく、ヨーガのエクササイズによって、偏っていた自律神経の働きが調整されていくのだろうと思います。

このように、身体の緊張と弛緩を入口にしているところが、普通の人がヨーガに取り組みやすいところです。とてもうまくできていると思います。よく誤解されるのは、別に体が硬いとヨーガができないのではないか、ということですが、決してそのようなことはなく、自分の身体と対話するのが目的ですから、ご自身のそのままの状態で取り組めばよいと思います。ただ、先生やインストラクターの柔軟性を見ると憧れてしまいますね。

■ヨーガはインドと西洋体操のハイブリッド

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