温もり削り出す

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■和田賢治さん(木工シェア工房「ツバキラボ」代表) おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(48)

受講生の前で、木工旋盤を実演する和田さん(2022年4月23日撮影)

岐阜市の北郊、緑まぶしい山あいにある椿洞(つばきぼら)に、本格的な木工を目指す人たちが県内外から集う工房がある。木工家の和田賢治さん(40)が2017年7月に始めた木工シェア工房ツバキラボだ。(井澤 宏明)

約500平方メートルもある元鉄工所を改装した工房に、50種類以上の木工機械や電動工具がそろう。家具や木製品の企画、製造も行っている。

4月の週末、皿やコップを作る4日間の「木工旋盤コース」を見学した。まだ初日だというのに、受講生たちは木工旋盤の機械と向き合っていた。クルクルと高速で回転する木片の表面にガウジと呼ばれる刃物を当てて凹凸を作る。削った跡が波紋のように広がり、見る見る形を変えていく。

長野市から泊りがけで参加しているという夫婦に声をかけた。夫の定年退職後、木工旋盤を買い、本を片手に見よう見まねでやってみたがうまくいかず、レッスンに参加したという。「スムーズにいくと恍惚感があります。気持ちいいですよ」。ひと汗かいた夫は満面の笑みを見せた。

レッスンの最中にも、思い思いに食器を削ったり、椅子づくりに取り組んだりする人たちが出入りし、スタッフに手助けしてもらっている。皆、既にレッスンを終えた会員で約80人いるという。

遠くは秋田県、ほとんどは岐阜市周辺や愛知県から。何となくやってみたかった人、プロとして作品を作りたいと考えている人などさまざまだ。

ただの工房ではなく、会員制の「シェア工房」としたところに、和田さんのこだわりがある。

さわやかな笑顔が印象的な和田さん。2人の男の子の父親でもある(2022年5月3日撮影)

「自分自身が暮らしに使う道具を自分で作れるようにならないとダメだなと感じて木工の世界に入ったので、同じように『自分で作りたい』という人たちを増やしていきたいと思ってきました。私たちも工房をシェアする人間。『教える、教えられる』という関係ではなく、会員さんが詳しければ教えてもらいます」

和田さんの原点は高校1年生、16歳のときに渡ったミャンマーの経験にあるという。和田家では父親の教育方針で4きょうだいは皆、高校生になると1年間、海外へ留学した。兄はマレーシア、姉は中国、妹はシンガポール。いずれも父親が勤めるアパレル企業の工場があった国だ。

■ミャンマーが原点

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