技能実習制度の見直し

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■連載:人事担当者がわかる最近の労働行政(著者:濱口桂一郎)

今年の1月14日、古川禎久法務大臣は閣議後記者会見で、「特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会」を設置し、「両制度の在り方について、先入観にとらわれることなく、御意見・御指摘を様々な関係者から幅広く伺っていきたい」と述べました。記者の質問に対しては、「虚心坦懐に勉強会を進めていきたい」、「あらかじめ予断を持って、このような方向性であるとか、こういう論点でということを決め打ちして始めるというものではありません」、「様々な御意見にしっかり耳を傾けながら、改めるべき点があれば、勇気を持って、誠実さを持って改めていくという姿勢でこの勉強会に臨む」と回答しており、何らかの制度改正は必要だという認識はあるようです。

ただ、この勉強会はあくまでも私的な会合という扱いのようで、法務省や入国在留管理庁のホームページ上にはこの勉強会に関する情報はほとんど載っていません。ただ、大臣記者会見で、1回目は政策研究大学院大学学長の田中明彦氏で、以後、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長の是川夕氏、移住連(移住者と連帯する全国ネットワーク)代表理事の鳥井一平氏、日弁連人権擁護委員会委員長の市川正司弁護士、タレントのパトリック・ハーラン氏、 一般社団法人国際人道プラットフォーム代表理事の菅野志桜里氏(国会議員時代は山尾志桜里名義)、東京大学名誉教授の養老孟司氏、政策研究大学院大学特別教授の西村清彦氏、多摩大学学長の寺島実郎氏、自由民主党元総裁の谷垣禎一氏という名前が示されているだけです。

政治的にセンシティブな問題でもあるだけに、去る7月10日の参議院選挙までは具体的な動きはできるだけ外に出さないようにしていたのだろうと思われますが、与党の勝利によって今後3年間政治的な安定期間が確保されたことから、これからいよいよ本格的な見直しの検討が進められていく可能性があります。現時点では、政府からは全く具体的な見直しの案は示されていませんが、この問題に関心を持つ人々からはいくつかの提起がされてきています。

ここでは、今年の4月15日に、日本弁護士連合会が公表した「技能実習制度の廃止と特定技能制度の改革に関する意見書」を見ておきましょう。これは、技能実習生の人権擁護に活躍してきた指宿昭一弁護士らが中心になってとりまとめられたものです。この意見書はまず、「技能実習制度を直ちに廃止する」ことを要求した上で、特定技能制度を以下の条件を満たす制度に改革するよう求めています。

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