■連載:人事担当者がわかる最近の労働行政(著者:濱口桂一郎)
去る3月末に成立した雇用保険法の改正により、事業を開始した受給資格者等に係る受給期間の特例という仕組みが新たに設けられました。
(支給の期間の特例)
第20条の2 受給資格者であつて、基準日後に事業(その実施期間が三十日未満のものその他厚生労働省令で定めるものを除く。)を開始したものその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該事業の実施期間(当該実施期間の日数が四年から前条第一項及び第二項の規定により算定される期間の日数を除いた日数を超える場合における当該超える日数を除く。)は、同条第一項及び第二項の規定による期間に算入しない。
これは、一旦雇用保険の受給資格を得た後のちに自ら事業を開始し、すなわち労働者ではなくなった者が、その事業を廃業して失業者となった場合を対象とするものであり、その意味ではフリーランスに対する(局部的な)失業給付という性格を有しています。
フリーランスへの失業給付という発想は、近年ヨーロッパで盛んに議論されており、隣の韓国でも全国民雇用保険という形で制度化が進んでいます。しかし、雇用労働者を前提に制度設計されてきた雇用保険をフリーランスに適用拡大するには、いくつも越えなければならないハードルが待ち構えています。最も重大なのはいうまでもなく、雇用であれば解雇や退職といった形で明確に確定できる就業状態と失業状態の線引きが、フリーランスの場合には曖昧なものになってしまうという点です。「最近めっきり注文が来なくなった」のをどの程度で失業と認定するかというのはなかなか難しいところでしょう。
ただ、焦点を近年注目を集めているプラットフォームを利用するタイプのいわゆるギグワーカーに絞れば、雇用形態としての日雇労働者と同様に、その日に仕事にありつけたか、それともあぶれたかという形で、線引きすることはある程度可能ではないかとも思われます。もともと、日雇労働者という存在自体、ある程度の期間継続的に雇用され就労することを前提とする雇用保険制度の枠組みには乗りにくいのですが、そこを工夫して日雇雇用保険制度という仕組みを運用していることを考えれば、客観的には似たような働き方をしているギグワーカーにも、日雇雇用保険制度を類推的に適用することも可能ではないでしょうか。
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