■連載:人事担当者がわかる最近の労働行政(著者:濱口桂一郎)
本紙の昨年5月25日号で「EUのデューディリジェンス指令案への動き」について解説しましたが、その時文末で「欧州委員会の方は、上記一般協議を終了し、現在具体的な指令案を検討中です。2021年第2四半期には提出すると予告されているので、おそらく今年6月に公表されると思われます」と述べていました。ところがこれがずるずると遅れ、同年第4四半期になっても提出されませんでした。
これに業を煮やした諸市民社会団体や欧州労連は、2021年12月8日に共同してフォン・デア・ライエン委員長宛の公開状を公表し、理由も明らかにされないまま延期が繰り返されていることに疑念を呈し、このままではグローバルサプライチェーンにおける強制労働が野放しになると懸念を表明しました。明けて2022年2月8日には、ダノンはじめ100以上の主要企業等が、デューディリジェンス指令案の早急な提出を求める公開状を公表し、その中で指令案の公表の深刻な遅延を深く懸念すると述べています。
こうして、同年2月23日、欧州委員会はようやく「企業の持続可能なデューディリジェンスに関しかつ公益通報者保護指令を改正する欧州議会と理事会の指令案」(Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on Corporate Sustainability Due Diligence and amending Directive (EU)2019/1937)(COM(2022)71)を正式に提案するに至りました。半年以上も遅れたのは、企業サイドから相当なロビイングがあったからだと思われますが、内容的にも適用対象企業から中小企業が除外されるなど、企業サイドに相当配慮した内容になっています。
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