■連載:人事担当者がわかる最近の労働行政(著者:濱口桂一郎)
去る2月1日、政府は雇用保険法等の一部を改正する法律案を国会に提出しました。経済政策の観点からは、保険料率の引上げなど雇用保険法の改正部分が重要ですが、法政策の観点からは職業安定法の改正部分が極めて重要です。というのも、労働市場ビジネスの規制対象を古典的な職業紹介事業やそれに類するものから大きく拡大する内容だからです。「募集情報等提供事業」がその新たなフロンティア領域です。正確に言えば、2017年改正によりこの概念は法律上に導入されていましたが、今回届出制の下に置かれることとなったのです。しかし、この問題を遡るともっと昔の話につながってきます。今回は、その歴史を概観しつつ、今回の法案の中身を吟味しておきましょう。
まず、職業紹介事業以外の雇用仲介事業に対して労働行政が関心を寄せた出発点は、1985年の労働者派遣法制定に伴って職業安定法を改正した際に、就職情報誌への規制を試み、業界の強い反発で諦めたことに遡ります。この問題は政官界を揺るがせたリクルート事件の1つの原因でもありました。その後1999年改正で有料職業紹介事業はポジティブリスト方式からネガティブリスト方式に変わりましたが、情報提供事業への規制はなされないままでした。ただ、この1999年改正で求職者等の個人情報保護規定が設けられたことは重要です。これは2003年の個人情報保護法に先行する規定であり、個人情報保護委員会とは別に独自の指針を有しています。
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